デュアルハルバッハ界磁型コアレス同期電動機の設計法

工学院大学

The Design Method of Dual Halbach Field Magnet Coreless Synchronous Motor

Kogakuin University

An IPMSM is used for various industrial machines. However, magnetic flux density distribution in an air gap
of the IPMSM has space harmonics. Then, IPMSM causes vibration and noise problems. We focused on Halbach
array that can make the magnetic flux density distribution strong and sinusoidal, to solve such problems. This
paper describes a design method of coreless synchronous motor using dual Halbach field magnets without
harmonics of the magnetic flux density distribution.

キーワード:ハルバッハ配列,同期電動機,コアレス,設計法,空間高調波
(Halbach array, Synchronous motor, Coreless, Design method, Space harmonics)

はじめに

埋込磁石型同期電動機(以下,IPMSM)は,リラクタン ストルクを活用できることから,高性能かつ高効率な電動 機として産業界に幅広く用いられている。しかし,一般的 なIPMSM には構造に起因したコギングトルクとトルクリ ップルが存在する。コギングトルクはコアを用いることに より発生し,トルクリップルはギャップ中の磁束密度分布 に空間高調波を多く含むことで引き起こされる。これらコギングトルクとトルクリップルは騒音や振動の原因となる だけでなく,機械系や制御系との共振現象によってシステ ム全体に悪影響を及ぼす。

そのため,ロータ形状の最適化 やリップルキャンセラの導入など,ハード・ソフトウェア の両面から低減を試みる研究成果(1)が報告されている。 本研究室では,ハードウェア面からのアプローチとして, 強磁性体のコアを使用せずに極めて高い磁束密度を得るこ とができ,かつギャップ中の空間高調波が少ない界磁とし てデュアルハルバッハ配列に着目した。デュアルハルバッ ハ配列を利用することで,高い磁束密度と正弦波状の磁束 密度分布を実現できるため,コギングトルクとトルクリッ プルが極めて少ないコアレス電動機の実現が可能となる。

先行研究ではデュアルハルバッハ界磁型同期電動機の実 現を目標として,平行型デュアルハルバッハ界磁を円筒型 へ変形する場合の磁石分割数やギャップ間距離が磁束鎖交 数へ与える影響(2)(3)について明らかにされている。また、これらに基づき電磁界解析ソフトを用いた実機設計が行われ た。 本稿では上記設計に基づき製作した45 度回転型デュアル ハルバッハ界磁を有するコアレス同期電動機の設計方法を 報告する。

2. デュアルハルバッハ配列

〈2・1〉 概要

ハルバッハ配列とは磁極方向に沿った断面が正方形の永久磁石を所定の角度ずつ回転させて構成
する配列である。この配列には,永久磁石列の片側のみに強い磁界が出現する特徴がある。このハルバッハ配列を二列用いて,高い磁束密度が得られる面を向かい合わせて平行に配列したものがデュアルハルバッハ配列である。デュアルハルバッハ配列の磁束線分布を図1 に示す。図中の矢印は,永久磁石の磁化方向を示している。この配列では,ギャップ中に極めて高い磁束密度分布が得られ,かつギャップ中心の磁束密度分布が正弦波状である特徴を有する。さらに,平行な磁石の外側へ漏れる磁束が少なく,漏れ磁束の対策も少なくすることができる。図1 ではデュアルハルバッハ配列の磁化方向を90 度ずつ回転させているが,整数倍することで360 度となる45 度や22.5 度でもギャップ中心に正弦波状の強い磁界を作り出すことが可能である。

〈2・2〉 永久磁石の基本形状

デュアルハルバッハ配列では,構成する永久磁石の縦横比が極端に大きくなければ片側に磁束が集中する。本研究では,磁気回路を用いたデュアルハルバッハ界磁の解析より,正方形の永久磁石を用いることとした。正方形磁石によるデュアルハルバッハ配列の磁気回路は図2 (a)のようになる。同図においてy 軸方向に着磁された永久弱の起磁力の半分が主磁束に寄与し,残りの半分が漏れ磁束に寄与すると仮定すると,漏れ磁束を表す閉路において起磁力の総和が零となるため,漏れ磁束が無いことを意味する。一方,長方形磁石によるデュアルハルバッハ配列の磁気回路は図2 (b)となる。正方形の場合と同様に起磁力を定義すると,漏れ磁束を表す閉路において起磁力の総和が零にならない。つまり,長方形磁石を用いた場合は漏れ磁束が存在することになる。回転機にデュアルハルバッハ配列を利用する場合,永久磁石の形状が扇型となるが,この場合も先行研究の等積変形を行うことで正方形磁石と同様の性質となる。

5. おわりに
本稿では,45 度回転型デュアルハルバッハ界磁を有するブロワ用同期電動機の設計方法を紹介した。今後は,本設計法に基づいて実機の製作を行い,電動機効率の評価を行っていく予定である。

文 献
(1) 橋本直樹,森下明平:「d 軸電流リップルを考慮したトルクリップル
キャンセラの有効性の検証」,マグネティックス・モータドライブ・
リニアドライブ合同研究会,MAG-17-167,MD-17-109,LD-17-088
(2017)
(2) 森村暢夫,森下明平 : 「デュアルハルバッハ型回転機における最適
設計法の検討 その2」, マグネティックス・リニアドライブ合同研
究会,MAG-16-045,LD-16-037 (2016)
(3) 森村暢夫,森下明平:「デュアルハルバッハ回転機における最適設計
法の検討 –磁石分割数に関する最適化-」,マグネティックス・モー
タドライブ・リニアドライブ合同研究会,
MAG-16-159,MD-16-099,LD-16-113 (2016)